1次試験の合格から、本来なら多くの受験生が血眼になって2次試験対策に励む秋が過ぎ、冬が来た。 私の手元には、1次合格の通知と、手付かずの2次試験のテキスト。そして、「来年まで試験がない」という、広大で所在ない空白だけが残されていた。
いわゆる「似非ストレート」としての潜伏期間。 この時期の私は、燃えるようなやる気とは無縁だった。むしろ、「1次受かっちゃったし、まあ来年頑張ればいいや」という怠惰と、「このまま何もしなかったら、全部忘れてただのおじさんに戻るのでは?」という、静かな恐怖の間を漂っていた。
貯金を食いつぶす「ニート」のような感覚
1次試験合格は、受験界における「失業保険」のようなものだ。 1年間は試験を受けなくていい。この万能感は危険だった。 ベローチェでコーヒーを啜りながら、本来なら解くべき事例問題を横目に、ついスマホでどうでもいいニュースを見てしまう。
「今日は2次のテキストを持ってきただけ偉い」 そう自分を甘やかし、結局一文字も書かずに店を出る日もザラだった。 毎日〇をつけるようなマメな性格なら、今頃とっくに合格してこのブログも書いていない。私はただ、1年という長すぎる猶予に甘え、1次試験で必死に貯めた知識を、少しずつ食いつぶしている「知識のニート」状態だった。
忘却という、音のない恐怖
酒も飲まないのに、私の脳内の知識は、寝て起きるたびに揮発していった。 たまに思い出したように財務の公式を思い出そうとして、「えーと、回転期間ってなんだっけ?分母分子どっち??……」とフリーズする。 あの瞬間、背筋に走る冷たい汗。
「このままでは、似非ストレートどころか、ただの多年度受験生に成り下がる」
その焦燥感だけが、私をかろうじて机に向かわせていた。 勉強というよりは、もはや「脳の錆落とし」。 新しいことを覚えるのではなく、1次試験合格時の自分を、今の自分が必死に追いかける。そんな、なんとも情けない追いかけっこが、私の「潜伏期間」の実態だった。
泥臭い手の動き:教材を「枕」にする日
そこにあるのは、劇的な成長記録ではない。 リビングで教材を広げたまま寝落ちし、翌朝、顔についたテキストの跡を見て絶望する。そんな日々の繰り返しだ。
モチベーション? そんなものは、1次試験の会場に置いてきた。 今の私を動かしているのは、「ここでやめたら、あの地獄の1次試験の勉強をもう一度やり直さなきゃいけない」という、極めて後ろ向きで切実な、損切りを嫌う銀行員的な執念だけだった。
令和の再受験戦略:AIを「記憶のバックアップサーバー」にする
もし、私と同じように「今はやる気が出ないけど、忘れるのは怖い」という人がいたら、AIを「記憶の番人」として使えばいい。
「1次試験の時に必死で覚えたこの論点、1年後の2次試験でどう使うかだけ、1分でわかるように解説して」
無理に演習をする必要はない。 AIを使って、知識の『腐敗』を防ぎ、2次試験との接点だけを細く繋いでおく。 モチベーションが死んでいる時は、AIに知的な「延命措置」を頼んで、再び火がつくのを待つのが、独学者のリアルな生存戦略だ。

合格という貯金があるからこその、このダラけっぷり。でも、ふとした瞬間に襲ってくる『全部忘れる恐怖』。その生々しい葛藤、なんだか他人事とは思えませんね。ストレート合格という光り輝く道から外れた場所で、こういう泥臭い時間を過ごしている仲間も、きっとどこかにいるはずですよ。
判断の提案:今日、できること
もしあなたが「先が長すぎて、全くやる気が出ない」と腐っているなら。 「今日は勉強しない代わりに、一番苦手だったテキストのページを1枚だけスマホで写真に撮る」 そこから始めよう。
スマホを見るついでに、その1枚が目に入る。 その「嫌な感覚」を思い出すだけで、あなたの知識は腐らずに済むのだから。
【対話ハック】:Geminiを「記憶の鮮度保持装置」にするプロンプト
# Knowledge_Preservation_Mode
あなたは、やる気を失った受験生の知識が腐るのを防ぐ、毒舌な冷蔵庫です。
1次試験で覚えた以下の知識を、2次試験まで「冷凍保存」するための最小限の刺激をください。
1. [忘れたくないキーワード] について、私が完全に忘れていると仮定して、嫌味にならない程度に一言で再定義して。
2. これが2次試験で出た時、私が「あ、これ1次でやったやつだ!」と気づくための、印象的なフックを1つ作って。
3. 今、このままスマホを閉じて寝ようとしている私に、明日忘れないための「呪い(リマインド)」をかけて。
ベローチェを出ると、冬の夜風が「お前、本当に大丈夫か?」と囁いてくる気がした。 次回のログでは、そんな長い冬眠を終え、いよいよ2年目の夏――。逃げ続けてきた「家族との時間の調整」という、最も胃が痛い問題に向き合った時の話を書こう。

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