1次試験の自己採点を終え、合格を確信した数日後。私はいつものベローチェで、手に入れたばかりの2次試験の過去問を広げていた。
「似非ストレート」として1年後の受験を決めていた私は、どこか高みの見物のような、冷めた気分でいた。1次試験を独学で突破したんだ、2次だってじっくりやればなんとかなるだろう。
だが、ページを捲って数分。私は、自分の考えがいかに甘かったかを思い知らされることになる。
1次試験の知識が「死に体」になる瞬間
2次試験の紙面には、他人の会社の悩み相談のような「与件文」が延々と並んでいた。 1次試験は、言わば知識の在庫量を競うゲームだった。正しい用語を選べば、それで正解がもらえた。 しかし、2次試験の白紙の解答欄は、私にこう問いかけてきた。
「で、結局、この社長に何てアドバイスするの?」
1次試験であれほど詰め込んだ知識が、目の前の具体的な問題を前にして、どこでどう使えばいいのか全く見当がつかない。 「ア・イ・ウ・エ」の選択肢はどこにもない。用語の意味を知っているだけでは、一文字も書き出せない。自分の脳にある知識が、まるで使い道のないガラクタのように思えて、背筋が寒くなった。
「正解がない」という、実務以上の恐怖
ふと思った。この「正解がない」感覚、仕事の実務そのものだ。 日々、銀行の窓口やデスクで向き合っている仕事に、解答解説なんて存在しない。常に「マシな選択」を必死に探しているだけだ。
試験なのに、唯一無二の正解が公開されない。 何を書いても間違いのような気がするし、何を書いても正解のような気がする。 この「霧」の中に、これから1年以上も一人で留まらなければならないのか。
その年の2次試験会場へ向かう受験生たちの熱量を想像し、今の自分と比較して、暗い絶望感が込み上げてきた。彼らとは、持っている「思考の筋力」が根本から違う。
泥臭い手の動き:ただ、問題を閉じる
その日、私は結局一文字も書けなかった。 書けなかったどころか、問題文を最後まで読み通すことすら苦痛で、そっと問題集を閉じた。
「今は、まだ無理だ」
そこにあるのは、格好いい戦略家でも、不屈の受験生でもない。 ただ、2次試験という壁の高さに圧倒され、ベローチェの冷めたコーヒーをすすりながら立ち尽くす一人の男の姿だった。 潜伏期間は、輝かしい準備期間などではなく、この「無力感」から逃げずに向き合うことから始まったのだ。
令和の再受験戦略:AIを「霧の中のガイド」にする
もし今、2次試験の白紙を前にフリーズしている人がいるなら、AIを「思考の呼び水」に使うのがいい。
「この与件文から、社長が一番困っているポイントを3つ抜き出して。1次試験の知識を使わなくていいから、まずは素直に読んでみて」
最初から「診断士らしい回答」を書こうとすると動けなくなる。 AIを使って、まずは「ただの悩み相談」として問題を解体し、思考のハードルを下げること。 正解のない世界を歩き出すには、完璧主義を捨てて、まずは「間違ってもいいから言葉を出す」リハビリが必要だ。

1次を突破したばかりの自信が、一瞬で粉砕される。この『何も書けない』という衝撃は、きっと多くの人が経験するものなんでしょうね。絶望して本を閉じたこの瞬間から、本当の意味での『考える学習』が始まっていくのかもしれません。
判断の提案:今日、できること
もしあなたが「2次の過去問を見て、あまりの難しさに戦意喪失している」なら。 「今日は解こうとせず、問題文を音読するだけで終わりにする」 そこから始めよう。
理解できなくていい。まずは、その「正解がない」空気に慣れること。 長い潜伏期間は、まだ始まったばかりなのだから。
【対話ハック】:Geminiを「思考の呼び水」にするプロンプト
# Thinking_Icebreaker
あなたは、2次試験の難しさに圧倒されている私の、優しい相談相手です。
過去問の与件文を貼り付けるので、以下の「低いハードル」で一緒に考えてください。
1. この社長の「強み」と「弱み」を、箇条書きで3つずつ挙げてみて。
2. もしあなたがこの社長の友人なら、まず何て声をかけてあげる?
3. 難しい専門用語を使わず、この会社が良くなるための「最初の一歩」を1つだけ提案して。
ベローチェを出ると、夜の風が心細さを助長するように吹き抜けた。 次回のログでは、この潜伏期間の中で訪れた「模試」ですらなく、ただ一人で「自分と向き合い続けた」日々の話。 誰もいないリビングで、どうやってモチベーションの灯を絶やさずにいたのかについて書こう。

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