【第4回】3級不合格からの逆襲。システム部時代の「簿記」という格闘

序章

ベローチェでコーヒーを飲みながら、ふと思い出す。 私が診断士の財務・会計で苦労しなかったのは、システム部時代に味わった「あの屈辱」があったからだ。

当時、私は「会社員として基礎知識くらいはないとまずいだろう」という、極めて素朴な動機で簿記の勉強を始めた。エンジニアとしてコードを書くわけでもない自分にとって、せめて世の中の仕組み(数字)くらいは理解しておきたかったのだ。

試験会場で凍り付いた、端数の不一致

「簿記3級なんて、少しやれば受かる」 そんな世間の声を鵜呑みにしていた私は、試験当日、愕然とすることになる。

試験終了まであと15分。 一番大きな精算表の問題を解き終え、貸方と借方の合計欄に数字を書き込む。 ……合わない。 差額はわずか数万円だったかもしれない。

血の気が引いた。どこかで一箇所、仕訳を間違えたか、転記ミスをしたか。 焦って検算を繰り返すが、叩けば叩くほど電卓は違う数字を弾き出す。端数が微妙に合わないまま、時計の針だけが無情に進んでいく。

「どこだ、どこが間違っている」

結局、右と左が微妙に食い違ったまま、私は震える手で答案を提出した。 結果は不合格。 「基礎知識」のつもりで受けた3級に落ちた事実は、30代を前にした私のプライドを粉々に砕いた。

借方と貸方が一致するまで帰れない

その日から、私の「逆襲」が始まった。 「右と左が合わないのは、自分の理解がどこか根本から狂っているからだ」

仕事が終わり、あるいは早朝。 私は意地になって電卓を叩き続けた。 借方は「左」、貸方は「右」。 「資産が増えたら左」「収益が出たら右」 頭で覚えるのではなく、指が、耳が、打鍵音が覚えるまで繰り返した。

やがて、パズルのピースがはまるように、貸借がピタリと一致する瞬間が訪れた。 あの時の脳汁が出るような快感。 バラバラだった世界が、一本の線でつながるような感覚。 この「泥臭い反復」で得た体感覚こそが、後に診断士試験の財務諸表を読み解く際の、絶対的な自信に繋がっていったのだ。

30代半ばの自分を助けた「20代の格闘」

結局、私はその後2級まで一気に駆け抜けた。 あの時、3級で一度叩きのめされたからこそ、私は「数字を舐めない」習慣がついたのだと思う。

30代半ば、経営企画部で周囲の人間関係に疲弊し、診断士受験を決意したとき。 財務・会計のテキストを開いた私の目に飛び込んできたのは、かつて格闘した「あの仕訳」たちだった。 過去の自分が泥を啜りながら身につけた武器が、数年後の自分に「お前なら大丈夫だ」と語りかけていた。

ふくろう先生
ふくろう先生

3級での足踏みが、かえって基礎を盤石にしたようですね。失敗したときの冷や汗や悔しさこそが、ただ暗記しただけの知識よりもずっと長く、あなたを助けてくれますよ。


令和の再受験戦略:AIに「合わない理由」を詰め寄る

もし当時の私がAIを使えたなら、試験後にこう叫んでいただろう。

「この試算表、右と左が1,200円合わないんだけど! どこでケアレスミスしたか、可能性を全部挙げて!」

自分で探せば1時間かかるミスも、AIなら一瞬で「逆仕訳の可能性」や「桁ズレ」を指摘してくれる。 「なぜ間違えたか」の検証を高速化すること。 これが、令和の独学者が持つべき最強のデバッグ手法だ。

判断の提案:今日、あなたができること

もしあなたが「基礎的なこと」でつまずいて落ち込んでいるなら。 「その『合わない理由』を、誰かに教えるつもりで徹底的にノートに書き出してみる」 そこから始めよう。

恥をかいた分だけ、その知識はあなたの体から離れなくなる。


【対話ハック】:Geminiを「仕訳デバッガー」にするプロンプト

# Journal_Entry_Debugger
あなたは、正確無比な会計監査人です。
私が作成した仕訳と試算表で、貸借が一致しません。差額は [金額] です。

[現在作成している仕訳のリストを入力]

1. この差額から推測される、最も可能性の高いミス(転記ミス、貸借逆、桁ズレなど)を3つ挙げてください。
2. 修正すべきポイントを、初心者にもわかりやすく解説してください。
3. 同様のミスを防ぐための、電卓の確認作業(検算)のコツを教えてください。

ベローチェを出ると、風が少し冷たい。 次回のログでは、診断士受験を決意した30代半ばの私が、お小遣い3万円という制約の中で「ベローチェ」をいかに攻略したかについて書こう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました