ベローチェの窓際で、通行人を眺める。 令和も半ばを過ぎた今、私は課長という立場で組織を回しているが、時折、8年前のあの「底なしの閉塞感」を思い出す。
当時、私は経営企画部に配属されてすでに数年が経過していた。30代半ばという、働き盛りでありながら、自分のキャリアの「底」が見え始めていた時期だ。 システム部時代に感じていた「技術がわからない」という直接的な劣等感は薄れていたが、代わりに襲ってきたのは、「自分には社外で通用する専門性があるのか」という別の問いだった。
専門性のない「潤滑油」
経営企画部での主な業務は、部署間の調整だった。 役員の指示を現場が動ける形に落とし込み、反対する部署との折り合いをつける。 数年もいれば、社内のパワーバランスや「誰に何を通せば物事が動くか」は手に取るようにわかるようになる。
しかし、それはあくまでその会社内だけで通用する、極めて限定的なスキルだった。 深夜、空っぽのオフィスで資料をホッチキス留めしながら、ふと自分の将来を考えた。 「もし明日、この会社がなくなったら、自分に何が残るのか」 社内の潤滑油として摩耗していく日々に、確かな危機感だけが積み重なっていた。
境界連結者(バウンダリー・スパナー)の限界
診断士の理論では、組織間の情報伝達を担う存在を「境界連結者」と呼ぶ。 実務においてこの役割は、常に板挟みになることを意味する。 論理的な正論よりも、感情的な納得感が優先される現場。 その不条理を飲み込み続けることは、知らず知らずのうちに、自分の思考を「社内基準」に固定させていた。
私が独学を始めたのは、輝かしい未来のためではない。 ただ、社外でも通用する共通言語を身につけ、この閉塞感から一歩踏み出す(One Step)ための、極めて現実的な生存戦略だった。
泥臭い手の動き:殴り書きのメモと脳内マップ
当時、私は付箋で関係図を作るような丁寧なことはしていなかった。 ただ、配布された社内資料の端に、鉛筆で「A部長:懸念」「B課長:リソース不足」と殴り書きをする。 そのメモを会議中に眺め、頭の中でパズルを解くように、次の根回し先を整理するだけだ。
格好いい可視化ツールなどない。 ただ、その「事象を整理し、論理の穴を埋める」という単調な繰り返しの経験が、皮肉にも後に診断士試験の事例問題を解く際の、強力な思考の基盤となっていった。
令和の再受験戦略:AIで「組織の不条理」を解体する
もし今の私が、あの頃の調整の沼にいたとしたら、AIを仮想の壁打ち相手にするだろう。
- 「この対立状況を、組織論の観点から3つの論点で整理して」
- 「相手の懸念点を想定し、それを解消する論理的アプローチを提示して」
自分の感情を挟まず、AIを使って状況を冷徹に分析する。 「調整」に費やす脳のメモリをAIにアウトソーシングし、浮いたリソースを自分の勉強に充てる。これが、令和の管理職が取るべき賢い立ち回りだ。

調整に費やすメモリをAIに逃がす。それは、自分にしかできない『思考』に集中するための戦略ですね。第1章では、そんな余裕すらなかった私が、いかにして自分と向き合ってきたかを綴ります。少し内省的な話になりますが、これも合格後の自分を形作る大切なプロセスなんです。
判断の提案:今日、あなたができること
もしあなたが「社内調整」に疲れ果てているなら。 「今抱えている対立を、一歩引いて、社外の人間(AIや架空のコンサルタント)に説明するつもりでメモしてみる」 そこから始めよう。
それは単なる愚痴の整理ではない。「事象を客観化する」という、診断士として最も重要なスキルの訓練になっている。
【対話ハック】:不毛な対立を「事例問題」に変換するプロンプト
# Conflict_Analyzer
あなたは、論理的思考に長けた経営コンサルタントです。
現在、社内で以下の対立が起きています。
[対立の内容を簡潔に入力]
1. この状況を、診断士試験の「企業経営理論」の観点から解説してください。
2. 感情を排した、論理的な落としどころを2つ提示してください。
3. これを「事例I」の問題文にするとしたら、どのような課題を設定すべきですか?
ベローチェを出ると、外はもう暗い。 次回のログでは、そんな不毛な日々の中で始めた「午前4時の起床習慣」について、これまた淡々と書いていこう。

コメント