【第52回】直接原価計算と貢献利益。貸タオルの真の利益計算

第二章:一次試験攻略

「貸タオルの利益を出すのに、ボイラーの修理代まで割り振っちまったら、本当の姿が見えなくなるな。」

カウンターで電卓を叩く店主。彼は今、入浴料550円とは別の「付帯サービス」である貸タオルの採算を考えていた。これまでは、店のすべての経費を「なんとなく」各サービスに割り振る「全部原価計算」のような考え方をしていたが、それでは「そのサービスを続けるべきか」という経営判断を誤ることに気づき始める。

店主がたどり着いたのは、外部報告のためではなく、自分自身が意思決定するための直接原価計算であった。

【理論プロファイル】直接原価計算と全部原価計算の「視点」

診断士試験において、この2つの違いを理解することは、管理会計の基礎となります。

全部原価計算

製品原価の中に「固定費(家賃や減価償却費など)」もすべて含める方法。在庫が残ると、その在庫の中に固定費が「隠れる」ため、売れていないのに利益が出ているように見えるマジックが起きます。

直接原価計算

変動費(使った分だけかかる費用)のみを原価とする方法。固定費は「売れても売れなくてもかかるもの」として、その月の費用として一括で処理します。

貢献利益

売上から変動費を引いたあと、さらに「そのサービス専用の固定費」を引いた利益。

ふくろう先生
ふくろう先生

1次試験では、全部原価計算と直接原価計算による『営業利益の差額』を計算させる問題が頻出します。ポイントは『期末在庫に含まれる固定費』の存在です。在庫が増えれば全部原価計算の利益が大きくなり、在庫が減れば直接原価計算の利益が大きくなる……このメカニズムを、まずはしっかり掴んでおきましょう。

【実務ノウハウ】店主、貸タオル100円の「中身」を解剖する

店主は、貸タオルサービスの損益を、具体的な数字で捉え直していく。

① 「全部原価」で考えた時の混乱

店主は最初、こう考えた。

「タオル1枚の貸出料は100円。洗濯石鹸代(変動費)が10円。でも、店の固定資産税や俺の給料、ボイラーの維持費をタオルの売上比率で割り振ると、1枚あたり110円のコストがかかっている計算だ。……あれ、貸せば貸すほど10円赤字か?」

② 「直接原価(意思決定)」での再計算

ここで店主は、考え方を変える。

「いや待てよ。タオルをやめたところで、固定資産税や俺の給料は1円も減らないじゃないか。」

判断に必要な数字だけを抜き出す。

  • 売上:100円
  • 変動費(洗濯代など):10円
  • 専用固定費(タオル乾燥機の電気代など):15円
  • 差し引き利益(貢献利益)75円

③ 「75円」が持つ本当の意味

この75円は、ボイラー代や税金という「店全体の共通の重荷」を肩代わりしてくれる金額だ。「1枚貸すたびに、店の共通経費を75円分、助けてくれているんだ」と考えれば、このサービスは絶対に続けるべきだと確信できる。

店主は、共通費という「動かせない数字」に惑わされず、そのサービス単体でいくら「貢献」しているかを見極める目が、経営判断には不可欠であることを学んでいく。

【AI共創:合格へのブースト術】

複雑な「差額調整」や「貢献利益」の概念を、AIを「ケーススタディの作成者」として活用して理解を深める。

  • 「利益調整のシミュレーション」:AIに「生産量と販売量が異なる場合の、全部原価計算と直接原価計算の利益の差異」を具体的な数値で算出させる。在庫の増減が利益にどう影響するか、その数理的な構造を脳に定着させる。
  • 「撤退判断のディベート」:特定の不採算部門(例:昭和の湯のコインランドリーコーナー)の数値をAIに与え、「貢献利益がプラスだが営業利益がマイナスの時、撤退すべきか継続すべきか」を議論させる。多角的な判断基準を学ぶトレーニングになる。

財務・会計を突破する「本物の武器」

この科目は、テキストを読む時間よりも「手を動かす時間」が合否を分ける。

  • これを完璧にすれば一次はいけます!最優先の武器。財務は「解き方のパターン」を体に染み込ませるゲームだ。この一冊を完璧にすれば、1次試験の計算問題の大部分をカバーできる。
  • これも必須。財務会計はとにかく手を動かしましょう!頻出論点を網羅的に叩き込むための必携書。過去問の「出方の癖」を知ることで、計算問題集で得た知識を本番用にチューニングする。
  • 論点を確認しましょう!辞書代わりに使用する。計算でつまずいた際、理論の背景を再確認するために3番手の位置づけで活用するのが効率的だ。

(独学以外の効率的な選択肢として)

  • [スタディング 中小企業診断士講座]

財務こそ、映像での学習が最も効果的だ。B/S や P/L の構造、キャッシュフローの動きを図解アニメーションで見ると、テキストでは分からなかった「数字の流れ」が立体的に理解できる。


「なるほど、10円の赤字だと思っていたものが、実は75円の助け舟だったのか……。」

店主は、計算機の向こう側にある「商売の真実」に一歩近づいた実感を抱く。

だが、どれだけ緻密に利益を計算しても、最後に「現金」がなければ暖簾は守れない。

次回、「キャッシュフロー計算書。現金が消える恐怖(営業CFなど)」

利益と現金のズレ、その最終回答へ。

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